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事業承継の進め方|失敗しないための準備・スケジュール・手続きを解説

事業承継を成功させるための進め方を徹底解説。準備期間の目安、後継者選定、株式・財産の移転、税務対策まで、経営者が知っておくべき実務的な情報をまとめました。

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はじめに

「いつかは考えなければ」と思いながら、後回しにしてしまいがちなのが事業承継です。しかし、準備が遅れるほど選択肢は狭まり、税負担が増し、後継者が育たないまま経営の空白期間が生まれるリスクが高まります。

中小企業庁の「中小企業白書」では、経営者の高齢化と後継者不足が日本の中小企業における深刻な課題として繰り返し指摘されています。特に2020年代後半は、団塊世代の経営者が一斉に引退期を迎える時期と重なっており、事業承継の問題はより切迫したテーマになっています。

この記事では、事業承継を「いつ・何から・どう進めるか」という視点で、実務的な手順を整理します。すでに検討を始めている方も、まだ着手できていない方も、自社の現状を確認するきっかけとしてお役立てください。


1. 事業承継とは何か——3つの類型を理解する

事業承継とは、会社の経営権・資産・人材・ノウハウなど、事業を継続するために必要なあらゆる要素を次の担い手に引き継ぐプロセスです。大きく以下の3つに分類されます。

① 親族内承継(family succession)

子や配偶者など親族に事業を引き継ぐ最も伝統的な形。従業員や取引先からの理解を得やすい一方、後継者の意欲・能力・相続人間の合意形成などが課題になります。

② 役員・従業員承継(MBO含む)

長年会社を支えてきた幹部社員や役員が後継者になるケース。事業の実態をよく知る人物が継ぐため、現場への影響は小さい傾向があります。ただし、株式取得資金の調達が課題になることが多く、MBO(マネジメント・バイアウト)の仕組みを活用する場合もあります。

③ 第三者承継(M&A)

社外の第三者(企業・個人)に事業を売却・譲渡する形。後継者がいない場合でも事業を存続させられる手段として注目が高まっています。中小企業庁が運営する「事業承継・引継ぎ支援センター」もM&Aマッチングの相談窓口を提供しています。


2. 事業承継に必要な準備期間の目安

「早すぎる」ということはありません。一般的に、準備開始から完了まで5〜10年程度かかるとされています。特に以下の要素が時間を要します。

中小企業庁の「事業承継ガイドライン(2022年改訂版)」では、遅くとも経営者が60歳を迎えるころには着手することが望ましいと示されています。


3. 事業承継の進め方——5つのステップ

ステップ1|現状の「見える化」

まず経営者自身が、自社の現状を客観的に把握することから始めます。具体的には以下の棚卸しが必要です。

「知的資産経営報告書」の作成は、自社の強みを整理し後継者や第三者に伝えるうえで有効なフレームワークです。中小企業基盤整備機構(中小機構)がテンプレートや事例を公開しています。


ステップ2|後継者の選定と意思確認

後継者候補を決めたら、意欲と覚悟を正式に確認することが重要です。「いずれ継いでくれるだろう」という思い込みは、直前での白紙撤回というリスクを生みます。

後継者選定のポイントは以下の通りです。


ステップ3|後継者の育成計画を立てる

後継者が決まったら、段階的に権限と責任を移譲するロードマップを作ります。

| 時期 | 育成内容の例 | |------|-------------| | 1〜2年目 | 現場業務の習得、主要取引先への同行 | | 3〜4年目 | 部門責任者として経営数値に責任を持たせる | | 5年目〜 | 副社長・専務などの役職で経営全般を担わせる | | 承継直前 | 金融機関・取引先へ後継者として正式紹介 |

この間、現経営者は「教える立場」にとどまらず、意思決定の権限を段階的に手放すことが後継者の成長を促すうえで不可欠です。


ステップ4|株式・財産の移転計画を立てる

経営権の移転において、株式(議決権)の承継は最も重要な要素です。オーナー経営者の場合、自社株式の評価額が高騰していることも多く、相続・贈与の際に多額の税負担が生じるケースがあります。

主な対応策を以下に整理します。

■ 事業承継税制(特例措置)の活用

2018年に創設された「特例事業承継税制」では、一定の要件を満たすことで自社株式の贈与税・相続税が猶予(実質的に免除)されます。ただし、特例承継計画の提出期限は2026年3月31日(2026年3月時点)とされており、まだ申請していない場合は早急な確認が必要です。詳細は中小企業庁のWebサイト、または都道府県の認定経営革新等支援機関にご確認ください。

■ 生前贈与の活用

毎年の基礎控除(110万円)を活用した計画的な贈与や、相続時精算課税制度の利用により、株式・財産の移転コストを分散できます。

■ 持株会社(ホールディングス)の設立

後継者が株式を取得しやすくする仕組みとして、持株会社を設立し、その株式を後継者が取得する形をとる方法もあります。組織再編を伴うため、税理士・弁護士との連携が不可欠です。


ステップ5|関係者への周知と経営権の正式移転

株式・財産の移転が完了したら、内外へ正式に後継者を周知します。

この段階で初めて「承継完了」と言えますが、実際には承継後も数年間は前経営者が顧問として関与し、後継者をサポートする体制をとるケースが多いです。


4. M&Aによる第三者承継を選ぶ場合の注意点

後継者が見つからない場合、M&Aは事業を存続させる有力な選択肢です。しかし、以下の点に注意が必要です。

相談窓口としては、事業承継・引継ぎ支援センター(全国47都道府県に設置)が無料で利用できます。民間のM&A仲介会社としては、バトンズ、M&Aサクシード、日本M&Aセンターなどが中小企業の案件も多く扱っています。


5. 専門家・支援機関の活用

事業承継は、税務・法務・財務・人事が複雑に絡み合うプロセスです。一人で抱え込まず、早期から専門家を巻き込むことが成功の鍵です。

| 専門家・機関 | 主な役割 | |------------|---------| | 税理士 | 株式評価、税務対策、事業承継税制の申請支援 | | 弁護士 | 株式譲渡契約、遺言書作成、紛争予防 | | 中小企業診断士 | 事業計画の策定、経営改善支援 | | 事業承継・引継ぎ支援センター | 無料相談、M&Aマッチング支援 | | 金融機関 | 融資・資金調達支援、後継者へのMBO資金提供 | | 認定経営革新等支援機関 | 特例事業承継税制の申請に必要な認定支援 |


まとめ

事業承継は「決断」ではなく「プロセス」です。いきなり完璧な計画を立てようとするのではなく、まず現状の見える化から始め、一歩ずつ進めることが重要です。

「いつかやろう」を「今日から始める」に変えることが、会社と従業員を守ることにつながります。


FAQ

事業承継はいつ頃から準備を始めればよいですか?

中小企業庁の「事業承継ガイドライン(2022年改訂版)」では、遅くとも経営者が60歳を迎えるころには着手することが望ましいとされています。準備開始から完了まで5〜10年程度かかるケースが多く、早期着手が選択肢の幅を広げます。

後継者がいない場合、会社はどうなりますか?

後継者が見つからない場合、選択肢は大きく「M&Aによる第三者への譲渡」と「廃業・解散」に分かれます。廃業は雇用の喪失や取引先への影響が大きいため、まず事業承継・引継ぎ支援センター(無料)に相談し、M&Aの可能性を探ることを推奨します。

事業承継税制(特例措置)とは何ですか?

2018年に創設された税制優遇措置で、後継者が自社株式を先代経営者から贈与・相続で取得した際の贈与税・相続税が一定要件のもとで猶予(実質免除)される制度です。利用には「特例承継計画」の提出が必要で、提出期限があります(2026年3月時点では2026年3月31日)。詳細は中小企業庁のWebサイトまたは認定経営革新等支援機関にご確認ください。

自社株式の評価額はどのように決まりますか?

非上場株式の評価は、国税庁が定める「財産評価基本通達」に基づき、主に「類似業種比準方式」「純資産価額方式」またはその折衷により算定されます。収益性が高い会社ほど株価評価が高くなる傾向があり、承継前に適切な対策を講じることが重要です。税理士への早期相談を推奨します。

従業員承継(MBO)を行う場合、資金はどう調達しますか?

後継者となる従業員が自社株式を取得する資金は、金融機関からの融資が一般的です。日本政策金融公庫や地域金融機関が事業承継向けの融資制度を設けているケースがあります。また、ファンドを活用したMBOスキームを組む場合もあり、弁護士・税理士・M&Aアドバイザーと連携して最適な資金調達方法を検討することが重要です。

M&A仲介とFA(フィナンシャルアドバイザー)の違いは何ですか?

M&A仲介会社は売り手・買い手の双方から手数料を受け取り、成立を促進する立場です。一方、FA(フィナンシャルアドバイザー)は売り手または買い手の一方の利益のみを代理します。利益相反の観点から、FAを使う方が交渉上有利になるケースもありますが、中小企業の案件では仲介形式が主流です。自社の規模・状況に応じて選択してください。